「海がきこえる」 単行本と文庫の異同

海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫)

 氷室冴子先生は、加筆修正作業が大好きと発言しており、文庫や愛蔵版でかなり修正される作品が多いです。「海がきこえる」文庫版あとがきでは、時代の変化がゆるやかになり修正が少ないと書いていますが、それでも直している箇所はかなりあります。

 単行本の二大ミス(すみません)、里伽子の父親の苗字と二巻での里伽子の弟の名前は直っています。

 また、里伽子と拓の再会シーンが、「まるでモーゼの海みたいに・・・」とよりドラマチックに演出されていたり、イタリア料理店で知沙と大沢を見た里伽子の台詞に「不倫ぽい雰囲気って独特ね。男の人の腰が引けてて」というコメントが追加されたりしています。本当に失礼だ・・・。

 時代の変化を反映した修正は、里伽子が歌う曲(Wink→アムロ)というのが目立ちますが、里伽子の前の高校での友人リョーコが携帯を持っているとか、ヤクルトの選手の名前とか多々あります。

 意外なポイントとして、イタリア料理のメインがローストビーフ→地鶏の赤ワイン煮込みに変わっています。確かに、そのほうが自然かも。個人的には、下北沢から4つ先に里伽子が住んでいるという箇所が直っていないのが気になりました。(豪徳寺は普通に数えれば3つ先)

 また、あとがきで直したのは億ションの値段くらいと書かれているのですが、その箇所が見つけられませんでした。ご存知のかた、ご教示ください。

 しかし、「海がきこえる」は、一巻を連載から単行本にまとめるときに大きく手直しされており、それに比べれば文庫での変化はわずかです。次回はその話で。