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「海がきこえるIIアイがあるから」美香の妊娠について

 

海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫)

 妊娠・出産の経験をへた後に「アイがあるから」を読むと、どうしても不自然に思える点がある。美香が流産するときに、まず友人の安西に電話をすることだ。成城に住む美香が月島に住む安西に電話で助けを求める。安西は救急車を手配し、豪徳寺に住む里伽子に連絡して成城のマンションに行かせる。里伽子がついたときには救急車がまだ来ておらず、流産の現場をみた里伽子はショックをうける。ちなみに、夫は海外出張中だ。

 美香はどうして最初に救急車か病院に連絡をとらないんだろうか?困ったときに頼りになる人に連絡をとるのは当然と拓がいうが、用心深い妊婦ならば、いざというときの連絡先をくらい確認していると思う。いくら雇い主兼親友でも、安西より救急車のほうがはるかに頼りになると思うのだが・・・。

 氷室冴子先生はどうしても、美香が流産する現場に里伽子が居合わせたという状況を作りたかったのだろう。しかし、里伽子と美香が二人で会うことは想像できないので、救急車を呼ぶのが遅かったという展開にしたと考えられる。でも、残念ながら不自然さが残ってしまったように思う。

 なお、美香は妊娠初期と思われるイタリア料理店のシーンで、グラスビールだの赤ワインだの飲んでいる。今よりも妊婦の飲酒に寛容だったのか(しかし、「銀の海 金の大地」では、妊娠中の氷葉州姫が振熊長老に飲酒をとめられている)、美香のことを妊娠中に飲酒する女性として描きたかったのか、あまり考えずに描いてしまったのか・・・。