氷室冴子作品 名前の重複

 

ターン ―三番目に好き (集英社文庫)

 たくさんの氷室冴子作品の中には、同じ名前の人物もいる。

 まず、主人公なのに名前が重複している「ターン」の田中鞠子。「ライジング」で祐紀のライバルとなる樋口鞠子と同じ名前だ。

 細かいところになると、井上。「雑居時代」の鉄馬のテニス部の後輩井上和彦と、「多恵子ガール」多恵子の合唱クラブの先輩だ。「クララ白書」に登場する実家がマッキーの近所にある上級生、吉田美子(よしこ)さんと、「アグネス白書」で光太郎につきまとう法学部一の美人佳子(よしこ)。また、「海がきこえるIIアイがあるから」で版画家ドキュメンタリーの企画を出した大男の須貝と、「クララ白書」高劇のピーターパン役を怪我で降板した須貝さんもかぶっている。

 「海がきこえる」には、作品内で同じ名前の人もでてくる。里伽子の東京の友人リョーコと、「II」で拓が一緒に服を買いにいってもらう染谷涼子。高校三年のクラスメートでリーダータイプの清水明子(あきこ)と美香の友人、安西明子(めいこ)。

 安西という名前は、「白い少女たち」で倫子に辛くあたる叔母の名としても使われている。「少女小説家は死なない!」あとがきで、この安西と思われる敵役に当時の担当編集者の名前をつけてしまい、抗議されたエピソードが披露されている。安西明子も、美香の流産に関して里伽子を非難する役回りだ。氷室冴子先生は、安西という名前に、何か無意識の思い入れがあるのだろうか?