「クララ白書」人気者の物語

アグネス白書〈2〉 (Saeko’s early collection〈volume.6〉) 

 「クララ白書」の重要人物たちは「徳心スター」といわれる人気者ばかりだ。しのぶ、マッキー、菊花、高城、虹子、白路、三巻、夢見・・・。人間関係が苦手な朝衣も、最終的には学園にとけこみ、生徒会の議長となる。今の言葉で言えば、「スクールカースト上位」の女の子達。

 ところで、かつてのコバルトでやはり女子校を舞台にした人気シリーズに「丘の家のミッキー」がある。久美沙織先生は、「制度の中で恵まれた地位にあったコドモが、あんまり恵まれていない地位に落っこちることによって、制度そのものに疑問を抱くって話(「鏡の中のれもん9」あとがき)」と述べている。

 「お姉さまたちの日々」を読むまで、「制度への疑問」というテーマは、「クララ白書」にあまりはっきりと描かれていないと考えていた。(だからといって作品の価値が減ずるわけではない)だが番外編で、誰もがあこがれるスター上級生達のとんでもない舞台裏を描いたことで、学園の人間関係の制度そのものを批判している側面が見えてきた。

 ちなみに、この制度において一番気の毒な位置にいるのは成田生徒会長だと思う。手腕の拙さを批判され、再選された後は強引な運営で孤立し、三巻と徹底的に対立する。しのぶと光太郎の写真を掲示する卑怯な敵役だが、最初からねじまがった人ではなかったのでは・・・という気持ちを捨てることができない。あだ名「成り上がり会長」が、その悲劇を象徴している。人気者でなかった人が、脚光を浴びる立場となってしまい、引きずり下ろされる。成田会長視点の番外編もあったら物語にいっそうの厚みが出ただろう、と夢想する。