「なんて素敵にジャパネスク」帥の宮の妊娠妄想

 ※鷹男ファンは不快になるかもしれない記述があるので、ご留意ください。

 

 ※ネタバレ注意

 

なんて素敵にジャパネスク 5 〈陰謀編〉―新装版― なんて素敵にジャパネスク シリーズ(7) (なんて素敵にジャパネスク シリーズ) (コバルト文庫)

 

 

 鷹男の帝の子どもについて考えてみたい。十三歳で元服し、添い臥しが今の桐壺女御で、一年後に右大臣家公子姫が入内した。帥の宮編の物語が進行しているときには二十歳で、他にも愛人が複数いるらしいが、皇子は東宮だけで、皇女もいる様子がない。

 

 東宮が帥の宮の子どもならば、鷹男は七年前に結婚して複数の妻がいるのにひとりも子どもがいないことになる。

 

 だから、由良姫を入内させ男子を産んでもらう計画は、私には非常に確率の低い賭けのように見える。だが、帥の宮は入内即男子誕生と決めているような熱心さで暗躍している。かなりの無謀だ。(結果的には、8巻の最後で承香殿女御が妊娠して、鷹男が完全に不妊症ではないことがわかるが)

 

 また5巻では、帥の宮が瑠璃姫の腹をあざがつくほどの強さで殴る。これも不思議だ。

 

 帥の宮が、東宮に有力な後見がつくこと、瑠璃姫が娘を産むことを恐れていることは納得できる。しかし帥の宮に、瑠璃姫が妊娠しているという確実な情報はないだろう。妊娠していなければ、腹を殴っても、「今晩にも、やるべきことをやったら、受胎する可能性がある(by倉橋数子)」のだ。にもかかわらず殴るのは、結婚即女子誕生と決めつけているかのようだ。

 

 一方、殴ったせいで、接吻とあわせて「あの女をハッスルさせただけじゃないか(by加賀建一)」。暴力でけん制したのかもしれないが、物の怪憑きの姫に対しては、百害あって一利ない愚挙だった。

 

 数々の非合理的な帥の宮の行動の理由は、やはり密通即男子誕生という自分の経験だろう。密通の罪悪感から、男女が関係すればすぐに政治情勢を変える子どもが産まれる、と必ず決めつけるようになったのではないか。帥の宮は、罪悪感による妊娠妄想にとりつかれた人物だった。

 

 そしてこの妊娠妄想に気づくと、もう一つ疑問が出てくる。東宮は、本当に帥の宮の子どもか?