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瑠璃姫と真秀

 瑠璃姫は子供の頃、鬼ごっこや石蹴りをしていたが、年頃になるとさすがにできず、たまにお忍びで外出する程度だ。しかも、琴も裁縫も書道も嫌いで、読書や絵に熱中する様子もない。毎日は、非常にエネルギーを持て余したものだろう。
なんて素敵にジャパネスク」1巻で、瑠璃姫はいつもいらいらしている。直接的には結婚問題のせいだが、もっと根本的な理由はエネルギーを持て余していることではないか。
 さらにいえば、瑠璃姫は平安貴族社会に対する痛烈な批判者だが、彼女の生活は(独身時代も結婚後も尼寺に行ったとしても)父親の財力抜きには成り立たない。耕作にいそしむ民草を思う視点はあるが、自分で手を動かして生きる糧を手に入れられるわけではない。そういった矛盾が瑠璃姫のウイークポイントなのではないかと思う。
 幼い頃から肉体労働に励んできた真秀は、そんな瑠璃姫とは対照的だ。真秀について、「氷室冴子読本」収録の萩尾望都先生との対談で、「生きてくために食べなきゃいけない、そういうことでがんばるという、とってもピュアなかたちで女の子に役割を負わせられます。」との発言がある。瑠璃姫の正反対だ。ジャパネスクを中断した氷室先生は、自らの手を動かして食べ物を得る力を持った真秀を書くことで、何らかの救いを得ていたのかもしれない。