「なんて素敵にジャパネスク」イラストとキャラクター描写

なんて素敵にジャパネスク 〈7〉 逆襲編 (コバルト文庫)

 

 藤本ひとみ「まんが家マリナ」シリーズの第一作「愛からはじまるサスペンス」本文では、マリナの外見の描写が非常に少ない。美人でない、平凡な白いブラウス、スカート程度である。背が低い、眼鏡、前髪を結んで「チョンチョリン」をつけているなどの容姿は、マリナのキャラクターと切り離せない関係にあるが、そのいずれも文中には書かれていない。マリナの外見は、谷口亜夢先生のイラストによって形成された部分が大きいといえる。

 「なんて素敵にジャパネスク」にも、イラストが本文の描写に影響を与えたと思しき箇所がある。由良姫は「やや丸みをおびた額には、たよりなげに前髪が数本、散って」いて、目元に高彬の面影があると描写される。私が見落としてない限り、本文中に高彬の前髪に言及した箇所はない。これは、山内直美先生の「前髪六本」といわれた高彬のイラストによるものではないだろうか。

 あとがきで「高彬をかっこよく描くよう、山内先生に手紙を」と書いて大騒ぎになった件が有名だが、こんなところにも山内ジャパネスクの影響があるのかもしれない。