「なんて素敵にジャパネスク」数え年の問題

なんて素敵にジャパネスク 〈8〉 炎上編 (コバルト文庫)

 「なんて素敵にジャパネスク8」で、大弐が桐壺女御の過去を告白するとき、「あの四年前の嵐の夜までは」という。瑠璃姫もそれを聞いて、東宮は三歳・・・符号が合いすぎる・・・と四年前に過ちがあったことを理解する。

 だが、数え年なのでこの記述はおかしいと思う。現在三歳の東宮が生まれたのは二年前。妊娠したのはその前年にあたる三年前か、(年末近くの生まれなら)二年前の早い時期となる。

 「銀の海 金の大地」でも、同じ問題がみられる。「まほろばの娘」の章まで、佐保姫と真秀は十四歳だ。彼女らが誕生した年は、春先に佐保姫が生まれ、御影が殺されかけ、美知主に助けられ、妊娠し、冬に真秀が生まれるというドラマがある。これらは十四年前の出来事とされているが、現在十四歳の人が生まれたのは、やはり十三年前となるはずだ。

 一方「羽衣の姫」では、数え年を考慮した書き方がされている。歌凝姫と珠姫が初めて会ったとき、前年夏生まれの珠姫は、数え年二歳、満年齢〇歳九ヶ月頃と推測される。歌凝姫は「うまれて、一年たらずの姫だった」と見ており、〇歳という表現を使えない中でも、珠姫の小ささが読者にわかるようになっている。

 ジャパネスクの「四年前」は1999年の新装版文庫でも修正されていない。読者が「三歳なのに三年前に妊娠?」と思わないように、あえて現在の表現を選んでいるのかもしれない。