「白い少女たち」 千佳の失踪理由の想像

白い少女たち (集英社文庫―コバルトシリーズ 52A)

 

 帥の宮に負けずに(?)私も妊娠について想像してみる。

「白い少女たち」の千佳は、妊娠していたのではないだろうか?そう判断できる記述はないが、小説の中では、妊娠していないと断言されてはいないと、私は考えている。

 作中の時間をみると、暴行事件が6月終わり、倫子に打ち明けたのが7月初め、家出したのが812日である。このタイムラグや、倫子に励まされたにも関わらず家出したことは、妊娠仮説で説明しやすくなると思う。

 千佳が妊娠して処置したという無神経なうわさが流れ、瑞穂がひどいショックをうける。瑞穂が千佳の死を確信し、遺体発見の誤報をうけて自殺未遂したのは、千佳の妊娠に思い至り、その絶望を想像していたからだと思われる。

 一方、倫子は妊娠の可能性に思い至っている様子がない。性的いたずらからのサバイバーであり、千佳と自分を同一視する傾向がある倫子には、その想像は耐えられず、無意識に目をそらしているのだろう。倫子の賢さと自制心と、千佳を助けたい気持ちにも限界があったといえる。

 千佳にも、倫子にも、あなたたちの味方はかならずいるから、どうか大人に相談してくれと言いたくてたまらない。「ざ・ちぇんじ」の綺羅君は、妊娠したと思い込んで失踪するが、身投げなどは考えもせず、芋売り娘とバトルしながらたくましく生きる。綺羅君が、千佳の別の姿であることを祈ってやまない。