「源氏物語」とジャパネスク 1

なんて素敵にジャパネスク 〈7〉 逆襲編 (コバルト文庫)

 いうまでもないが、平安文学パロディの「なんて素敵にジャパネスク」は、「源氏物語」を思わせる箇所がたくさんある。
 瑠璃姫の名は、夕顔の娘玉鬘と同じ名を持つ。しかし玉鬘は、田舎育ちながらも理想的な貴族女性だが、瑠璃姫は平安貴族女性の常識をすべてやぶり、活発で率直で乱暴で外出が好きで結婚を拒もうとする。
源氏物語」の末摘花は、「落ちぶれた屋敷にひっそりと住む高貴な美しい姫」という、当時の幻想に紫式部がNOをつきつけたキャラクターだろう。氷室先生は、その末摘花にさえNOをつきつける。「落ちぶれた屋敷にひっそりと住む高貴な美しい姫」であるはずの煌姫の性格は、ご承知のとおりだ。
 煌姫のすごいところは、いざというとき武器を手に戦う気概すらもっていることだ。7巻で潜伏した漁師小屋に追っ手の気配があったとき、煌姫は「鋤のようなもの」を手にとって、迎え討つ準備をする。結局ことなきをえるが、宮姫として育ちながら、ナチュラルに戦おうとする煌姫の胆力には感心するほかない。
 一方の瑠璃姫にも、2巻では小刀を持って唯恵に向かっていくシーンがある。
 時には武器を手に取り戦う気迫をもった姫君たち。平安時代には想像もできなかったキャラクターだろう。