2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧
氷室冴子先生は、加筆修正作業が大好きと発言しており、文庫や愛蔵版でかなり修正される作品が多いです。「海がきこえる」文庫版あとがきでは、時代の変化がゆるやかになり修正が少ないと書いていますが、それでも直している箇所はかなりあります。 単行本の…
人の親になって「海がきこえる」二冊を読み返したら、里伽子の父に腹が立って仕方なかった。不倫して離婚したのは仕方ないとしても。 まず、高校生の里伽子が東京に行ったときのことだ。里伽子がひとりで拓の泊まるホテルに来たとき、父親は何をしていたのか…
高校生のとき、友人に「北里マドンナ」を貸して読ませたら、「ペリエが常備してあって子どもが水代わりに普通に飲んでいい家庭って、すごいブルジョワ」という感想だった。(当時は、「セレブ」という言い回しはなかった)私はそのころペリエを知らなかった…
氷室冴子先生が続編を予告し、発表されないままとなった小説の中で、私が二番目に読みたいのは「北里マドンナ」の続きの麻生野枝編だ。(一番目は「銀の海 金の大地」の第二部以降) 野枝からみたなぎさや多恵子や北里はどのように描かれるのだろうか。北里…
「北里マドンナ」では「なぎさボーイ」「多恵子ガール」の脇役、森北里が、親友なぎさへのコンプレックス、なぎさのガールフレンド多恵子への恋愛感情、そのカップルを揺さぶった槙への思いを語る。 しかし、読み返してみて、もっと語られるべき大事なことは…
「いもうと物語」の「黒い川」で、チヅルは母清子に連れられて母方の伯母の家へ行く。そこで彼女がみたのは、斜陽になりつつある炭鉱町や、景気が悪くなって落ち込む伯父と家族の争いに悩む伯母、粗暴ながらも成長しようとする従兄だった。炭鉱労働者にはな…