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蕨ヶ丘物語:小梅ばあさん再考

蕨ケ丘物語 (集英社文庫―コバルト・シリーズ)

 筆者は中学生のとき初めてこの作品を読み、第三話まで抑圧的だった小梅ばあさんが第四話で見せる生き生きとした素顔、過去の片思いの相手たちを探しに行く展開、そしてドタバタが非常に痛快だったという記憶がある。しかし、この作品を書いた頃の氷室先生の年齢も過ぎ、就職や結婚や出産を経験した目で読み返してみると、印象が変わっていた。

 

 小梅ばあさんは、東京で女学生生活をおくった青春時代が一番楽しかったと回想したり、片思いした信さまに駆け落ちをもちかけたりしている。自分ができなかった「ふしだら」を孫娘たちにさせてたまるかと厳しくしつけ、少しでも早く当主の重圧から逃れ、自由になりたかったとも言っている。

 

 ・・・これでは、孫娘たちが競って「ふしだら」に走り、跡継ぎから逃れようとするのも当然だ。小梅ばあさんの時代よりもふしだらのハードルは低くなっているのだ。せめて、長子を大学にいかせたり、好きな人と結婚させたりして、跡継ぎでもある程度自由な人生をおくれるようにすればよかったのに。