落窪物語 番外編
氷室冴子先生は、講談社「落窪物語」のあとがきで、少将の乳母を主人公にして番外編を書きたいと述べている。
「冴子の母娘草」「いっぱしの女」「なんて素敵にジャパネスク」「ターン」・・・氷室先生は、結婚しろと子供に重圧をかける親のモチーフを繰り返し書いてきた。それは、ご自身の体験にもとづく部分が多かったのだろうと思う。
だから、発表された作品は、重圧をかけられる子供の視点から書かれたものばかりだ。氷室先生が、子供に重圧をかける母親の視点から書けば、新境地となったことだろう。書かれなかったことが惜しまれる作品は多いが、その一つである。