落窪物語 番外編

21世紀版 少年少女古典文学館 3 落窪物語

 氷室冴子先生は、講談社落窪物語」のあとがきで、少将の乳母を主人公にして番外編を書きたいと述べている。
「冴子の母娘草」「いっぱしの女」「なんて素敵にジャパネスク」「ターン」・・・氷室先生は、結婚しろと子供に重圧をかける親のモチーフを繰り返し書いてきた。それは、ご自身の体験にもとづく部分が多かったのだろうと思う。
 だから、発表された作品は、重圧をかけられる子供の視点から書かれたものばかりだ。氷室先生が、子供に重圧をかける母親の視点から書けば、新境地となったことだろう。書かれなかったことが惜しまれる作品は多いが、その一つである。