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「なんて素敵にジャパネスク」東宮の父親

※ネタバレ注意

なんて素敵にジャパネスク 〈8〉 炎上編 (コバルト文庫)

 強引な仮説だが、「なんて素敵にジャパネスク」は、東宮が鷹男の子どもである可能性も完全に否定せずに書かれていると私は思っている。

 基礎体温や超音波検査やDNA鑑定がない時代、女性が複数の男性と関係して、どちらの子どもか断定するのは、よほど関係した時期が離れていなければ無理ではないだろうか?鷹男が疑っている形跡はない。ある程度近い時期に鷹男とも交渉があったならば、誰にも父親を確定できないのではないか? 

 鷹男と帥の宮が血縁関係にあり、容姿も似ていることもポイントだ。東宮の容姿から父親を判断できない。8巻の最後で承香殿女御が妊娠し、鷹男がまったくの不妊症でないことも分かっている。

 「源氏物語」では藤壺の妊娠について、懐妊報告の遅れを物の怪のせいにして取り繕う、出産時期が大幅にずれる、子どもの顔が源氏にそっくりなどの記述がある。女三の宮の懐妊を聞いた源氏の心に最初によぎるのは不審の念だ。

 「とはずがたり」では、上皇の妃二条が恋人と成した子どもについて、早産で死産だったとごまかしたり、二条が他の男性の子を妊娠したと夢見で気づいた院が、わざと交渉を控えて父親をはっきりさせたりする話もある。

 これらの古典文学では、密通によって妊娠した場合、父親が判断できる客観的な根拠をかなり明確に書いてある。

 「なんて素敵にジャパネスク」には、こういった客観的な根拠が書かれていない。間違いなく東宮の父が帥の宮だとしたければ、氷室先生は「早産だったと偽ったので帝は何も気づいていない」などと書いたのではないだろうか?(ただ、構成の問題や、大弐が瑠璃姫にそこまで説明するのは不自然だという理由で書いていないのかもしれない)

 というわけで、帥の宮らは罪悪感による妊娠妄想により東宮が帥の宮の子と思い込んでいるが、実はそうではなかった、と考えても案外矛盾せずに物語を読めると思う。子どもができたかどうか冷静に判断できないほどの罪の意識と苦悩が描かれているということになる。

 

 この文を書いている間、自分が「ガールフレンズ」収録の藤田和子先生との対談中にある、藤壺中宮の生理日を一生懸命考える人のようでした・・・。