「なんて素敵にジャパネスク」愛ゆえの長さ

なんて素敵にジャパネスク 〈8〉 炎上編 (コバルト文庫)

 3巻から8巻は長い。3巻は新婚生活、4巻はアンコール編の後日談、守弥と瑠璃姫の決着が書かれている。そして、はっきりと話の区切りがあるわけではないが、5巻から8巻までがほぼ師の宮編となる。
 異論はあろうが、師の宮は少し長すぎるのではないかと思うときがある。宮廷事情の説明の繰り返しや、習俗の説明を減らせば、2冊くらいになるのではにかな、と。
 しかし、そういった背景を書き込み方をみると、氷室先生が古文教師として授業しているシーンが思い浮かぶ。古文が好きで好きでたまらず、話をはじめるといつも止まらなくなってしまう、古文好きな子には愛されている先生。そんな授業も、悪くない。

ナタリーって誰?

冬のディーン夏のナタリー〈1〉 (集英社文庫―コバルトシリーズ)

 映画に無知な私の素朴な疑問なのですが、「冬のディーン 夏のナタリー」のナタリーとは、誰のことを指しているのでしょうか?
 ディーンは、「エデンの東」で弟を演じたジェームズ・ディーン。作中でワタルが、ディーンをタケルと重ね合わせる。
 しかし、ナタリーについては作中に言及がない。「エデンの東」の登場人物でもないようだ。ナタリー・ポートマンは年代的に合わないと思う。
 ご存じの方、教えてください。

 

落窪物語 番外編

21世紀版 少年少女古典文学館 3 落窪物語

 氷室冴子先生は、講談社落窪物語」のあとがきで、少将の乳母を主人公にして番外編を書きたいと述べている。
「冴子の母娘草」「いっぱしの女」「なんて素敵にジャパネスク」「ターン」・・・氷室先生は、結婚しろと子供に重圧をかける親のモチーフを繰り返し書いてきた。それは、ご自身の体験にもとづく部分が多かったのだろうと思う。
 だから、発表された作品は、重圧をかけられる子供の視点から書かれたものばかりだ。氷室先生が、子供に重圧をかける母親の視点から書けば、新境地となったことだろう。書かれなかったことが惜しまれる作品は多いが、その一つである。

 

 

 

 

氷室冴子先生と藤花忌

なんて素敵にジャパネスク 人妻編 1 (白泉社文庫 や 2-11)

 発売中のメロディ6月号555ページに、「なんて素敵にジャパネスク人妻編」を含む白泉社文庫の広告が掲載されている。白泉社のほかの出版物にも、同じ広告が載っていると思われる。
 そこに、「藤花忌「氷室冴子さんを偲ぶ会」のお知らせ」のコーナーがあり、HPのアドレスとともに、今年は七回忌にあたるので、多くのファンに来てもらいたい等と書かれている。
 
 作家の命日に植物の名をつけたものは、桜桃忌、菜の花忌などが思い浮かぶが、氷室先生は藤花忌となったようだ。実をいうと、「6月は有名すぎる桜桃忌があるし・・・紫陽花はあまり氷室先生の作品との関連が思い浮かばない・・・撫子や百合は、花の名自体に意味がついてしまっている・・・「恋する女たち」の葬儀シーンのレモンは、当然基次郎に使われている・・・彼岸花では季節が・・・真珠と血赤サンゴがお好きと書いていたから、そっちではどうか・・・でも、ジャパネスクのイメージは入れたい・・・いっそ瑠璃忌では・・・でも、瑠璃姫だけを書いたように思われるのも先生は嫌がるだろう・・・」等、自分で考えたことがある。誰にも頼まれていないのに。
 
 氷室先生と藤の関連を、思いつくままにあげてみる。

・「アグネス白書」朝衣の夢「花びらが降りしきる下で、わたしをよく理解してくれている男性に、きみは優しい、いいひとだ、ぼくはきみが大好きだ、と言ってもらいたい」が悲しく実現したのは、自宅の藤棚の下だった。桜だと、進学したものの孤立しているという状況に早すぎるから藤の花かと一瞬思ったが、それは関東の感覚で、北海道の桜はもっと遅いだろう。ベタさを避けた選択だろうか。

・「続ジャパネスク・アンコール!」結末近くで瑠璃姫が帝に贈った和歌 「今日よりは/紫匂う花房の/藤もひらけり/初夏の夜」

・「冬のディーン 夏のナタリー2」で、藤色のシルクのアンサンブルスーツを着たゆり絵を目撃した蓉子は、「あわい藤色という、着こなしがむずかしい、へたをするとボケてしまいそうな色を着こなしているのも、センスの良さを思わせた」とコメントしている。
・「多恵子ガール」で、多恵子が「日舞って藤娘しか知らない」との発言。

 ここまで、成就しない恋にからんで登場することが多い気がする。

・瑠璃姫と高彬はそれぞれ藤原氏の出身。
・氷室先生は藤女子大学の出身。

 他にあると思いますので、ご指摘ください。

恋する女たち カバーデザイン

  現在「恋する女たち」の書影として通常出てくるのは、斎藤由貴さんがあぐらをかいて腕組みをしている写真だと思う。これは、映画公開時のものだろうから、当然、その前のバージョンがあることになる。
 1996年ごろ、古本屋で前のバージョンを見つけて、思わず買ってしまった。

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 旧バージョンは「カバー絵/石関詠子(イラスト・ファクトリー)装丁/三谷明広」、新バージョンは「写真提供/東宝株式会社 装丁/三谷明広」となっている。

 旧バージョンはカバー裏見返しに同時期発売と思われる本のタイトル・著者が列記されている。「愛の小説集 小さな花の歌」清川妙「サイボーグ009超銀河伝説」原作石森章太郎 杉山卓「イラストエッセイ あなたとミルクティー」みつはしちかこなど。時代を感じる。「恋する女たち」は上から四番目だ。


 くしくも、私の手元にあるのは、旧バージョン、新バージョンとも昭和60年10月15日発行の第23刷だ。初版が56年なのでかなりの勢いで増刷がかかっている。映画公開は61年なので、在庫のカバーをかけかえて販売されたものだろうか。
 映像化作品には手を出していなかったが、映画も見たくなってきた。

氷室冴子先生を偲ぶ会2014

 偲ぶ会を主催なさっている田中二郎先生が、2014年の告知をなさっている。
6月7日14時 龍善寺とのこと。
今年は、参加してみたい。

http://nerimadors.or.jp/~saeko/


田中二郎先生は、大学の教員でいらして、氷室先生とはお友達で、
パソコンの管理をされていたそうだ。
氷室先生が生前お使いになっていたアドレスが今も生きていて、
田中先生が氷室先生関係の連絡に使っている。

このページの各項目をクリックすると、文章が載っている。
●ご本 には、日本橋学館大学に寄贈された、氷室先生の蔵書リストが
載っていて、必見。ご自身の本、好きだとエッセイに書いていらした作家の本、
書評を書いた本、ジャパネスクや銀金の資料だったと思われる本。
少しずつ読んでいき、氷室先生がどんなことを考えていたのか、
想像するのも悪くないと思う。