古本ぺんぎん堂

 

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 氷室先生の著作年表を掲載されている、オンライン古本屋さんです。
 アンソロジー・解説。エッセイ集などに収録された作品もとても充実したラインナップです。
 店主の方による解説がついている上、そのまま購入できる書籍も多いです。
 

 

「源氏物語」とジャパネスク 2

 桐壷女御は、かなりはっきりと桐壷の更衣を連想させるよう書かれている。名前と、後宮での頼りない立場。大納言の女(むすめ)として入内すると、立場が弱い。
 作中にはもう一人、大納言の女が登場する。そう、瑠璃姫である。何不自由ない姫君のイメージがあったが、今回再読して、登場時には大納言の女(2巻で内大臣の女になる)だと気づいた。本人も親もそもそも後宮入りを考えないから、大納言の女であることをひけめに思う必要がないのだが。
 また桐壷女御(絢子姫)は、帝の妻でありながら、帝の近親者と密通して子供を産んでしまう、藤壷中宮にも似ている。桐壷更衣と藤壷中宮の両方と共通点をもつ女性、絢子姫がたどった運命は、源氏物語よりもさらにドラマティックかもしれない。

 

「源氏物語」とジャパネスク 1

なんて素敵にジャパネスク 〈7〉 逆襲編 (コバルト文庫)

 いうまでもないが、平安文学パロディの「なんて素敵にジャパネスク」は、「源氏物語」を思わせる箇所がたくさんある。
 瑠璃姫の名は、夕顔の娘玉鬘と同じ名を持つ。しかし玉鬘は、田舎育ちながらも理想的な貴族女性だが、瑠璃姫は平安貴族女性の常識をすべてやぶり、活発で率直で乱暴で外出が好きで結婚を拒もうとする。
源氏物語」の末摘花は、「落ちぶれた屋敷にひっそりと住む高貴な美しい姫」という、当時の幻想に紫式部がNOをつきつけたキャラクターだろう。氷室先生は、その末摘花にさえNOをつきつける。「落ちぶれた屋敷にひっそりと住む高貴な美しい姫」であるはずの煌姫の性格は、ご承知のとおりだ。
 煌姫のすごいところは、いざというとき武器を手に戦う気概すらもっていることだ。7巻で潜伏した漁師小屋に追っ手の気配があったとき、煌姫は「鋤のようなもの」を手にとって、迎え討つ準備をする。結局ことなきをえるが、宮姫として育ちながら、ナチュラルに戦おうとする煌姫の胆力には感心するほかない。
 一方の瑠璃姫にも、2巻では小刀を持って唯恵に向かっていくシーンがある。
 時には武器を手に取り戦う気迫をもった姫君たち。平安時代には想像もできなかったキャラクターだろう。

 

 

「なんて素敵にジャパネスク2」セリフ対決

「ガールフレンズ」収録「冴子ベスト3」ので氷室先生が、お気に入りのキザセリフとして2巻から二つあげている。
 1位は唯恵の「世、みな牢固ならず。水沫泡焔のごとし。あの日々は儚く、見果てぬ夢のように輝いていましたね」
 3位は高彬の「ぼくで、我慢しなよ」
 私は、どちらかというと高彬のセリフの方が好きです。瑠璃姫の何もかもを受け入れ、肯定する。かやの外におかれがちな高彬だが、この一言で一気に男を上げたと思う。
 どちらが好きな人が多いのだろう?

 

「なんて素敵にジャパネスク」愛ゆえの長さ

 3巻から8巻は長い。3巻は新婚生活、4巻はアンコール編の後日談、守弥と瑠璃姫の決着が書かれている。そして、はっきりと話の区切りがあるわけではないが、5巻から8巻までがほぼ師の宮編となる。
 異論はあろうが、師の宮は少し長すぎるのではないかと思うときがある。宮廷事情の説明の繰り返しや、習俗の説明を減らせば、2冊くらいになるのではにかな、と。
 しかし、そういった背景を書き込み方をみると、氷室先生が古文教師として授業しているシーンが思い浮かぶ。古文が好きで好きでたまらず、話をはじめるといつも止まらなくなってしまう、古文好きな子には愛されている先生。そんな授業も、悪くない。

「書かずにはいられない」北村薫

書かずにはいられない: 北村薫のエッセイ

 

北村薫先生の「書かずにはいられない」に、
氷室先生の「冴子の東京物語」の書評が載っていました。

北村薫先生がプロフィールを全く明かさない覆面作家として
女子大生を語り手とする小説を発表していた頃、
「あなたは、氷室冴子の別ペンネームですね」という
手紙を受け取られたというエピソードも明かされています。
今となっては、・・・え?と思ってしまいますが、当時はどうだったのか。

「書かずにはいられない」単行本は2014年刊行ですが、
この文章の初出は1992年6月「ダ・カーポ255」(文庫化から2年)となっています。
当時、こういう書評は大量にあったのだろうと思います。

芸術新潮 2014年7月号 「もっと素敵にジャポニスム」

芸術新潮 2014年7月号の特集が、

「もっと素敵にジャポニスム」だった。

どこかで聞いたような・・・

 

芸術新潮 2014年 07月号 [雑誌]

 

氷室冴子先生は、「タイトルで一番こだわったのは

なんて素敵『に』のところ。なんて素敵『な』では全くダメ」

と語ってらした記憶がある。

(すぐに出てこないので確認していないが、

後藤星先生のイラストでジャパネスクが

再刊される際の雑誌コバルトの特集だったと思う)

そのこだわりポイントをいただいてしまうとは・・・。